- 親指(p):ベース弦(6弦・5弦・4弦のいずれか、コードのルート音)
- 人差し指(i):3弦
- 中指(m):2弦
- 薬指(a):1弦
「ワンダフルトゥナイト 弾き方」と検索して、このページにたどり着いてくれたあなた。たぶん、こう思っていませんか。
「セーハなしの4コードって聞いたから始めたのに、思ったより難しいんだけど…」と。
正直に言うと、僕も最初はそうだったんです。25年前、エリック・クラプトンに憧れてギターを買って、最初に挑んだ曲のひとつが「Wonderful Tonight」でした。指は届く、コードも単純、でも弾いているうちに「あれ、原曲のあの優しい響きにならないぞ」と気づくんですよね。
そこから10年、僕はずっと遠回りをしました。今思うと、上位サイトが教えてくれる「イントロのフレーズ解説」と「セーハなしの4コード」だけでは、たどり着けない場所があったんです。
この記事では、僕がギター講師として25年現場で見てきた「ワンダフルトゥナイトでつまずく人の共通点」と、3回のクラプトン来日公演(1995年福岡/2014年・2016年武道館)を生で観てきた経験をもとに、「弾ける」の先にある「クラプトンらしく弾ける」までの道のりを、4段階のロードマップでお伝えします。
- ステップ1:イントロの弾き方(あの有名フレーズ)
- ステップ2:アルペジオでのバッキング(実はここが本体)
- ステップ3:ソロの弾き方(スタジオ版とライブ版の弾き分け)
- ステップ4:音作り(クリーントーンの基本)
2025年の武道館公演に参戦した方からは、Xでこんな声も上がっていました。
エリック・クラプトン武道館ライブ。めちゃくちゃ贅沢な時間だった。Wonderful TonightとCocaineが会場の一体感も含めて最高だった!(@max_dqx/2025年4月14日のXポストより)
「あの瞬間を自分の指で再現したい」――その気持ち、痛いほどわかります。だからこそ、回り道をせず、最短距離で「弾ける」と「響かせる」の両方を手に入れていきましょう。
Wonderful Tonight 弾き方の全体像|まずは曲の地図を持とう
結論から言うと、Wonderful Tonightは「キーG・基本4コード(G・D・C・Em)にD/F#とBmが少し加わる」というシンプルな構造です。難しいコードは出てきません。だからこそ、誤解されがちなんですよね。
ギター練習曲としての評価は、複数のギター教室サイトでほぼ一致しています。「セーハなしの4コードでセーハがない、初心者に最適」(ギターの東大、エルギタースクール 他)。一方で、こんな指摘もあるんです。
難易度は高くないが、いかに感情を込めて弾けるかがカギ(BanMusic)
これ、めちゃくちゃ核心を突いていると思うんです。「鳴らせる」と「聴かせられる」の間には、深い谷があるんですよね。
曲の構成セクションと、各パートで弾くもの
まずは曲の地図を頭に入れておきましょう。これがないと、練習しているうちに「今どこを弾いているんだっけ」と迷子になります(昔の僕がそうでした)。
| セクション | 主な役割 | 使用コード(基本) |
| イントロ | リード(メロディフレーズ) | G – D/F# – C – D |
| ヴァース(A1/A2) | アルペジオで弾き語りバッキング | G – D – C – D / Em – D – C – D |
| ブリッジ | 少し高揚するパート | C – D – G ほか |
| 間奏ソロ | リード(Gメジャーペンタトニック) | イントロと同じ進行上で展開 |
| アウトロ | イントロのフレーズで締める | G – D/F# – C – D |
注目してほしいのは、イントロ・間奏ソロ・アウトロの3箇所が同じコード進行(G→D/F#→C→D)の上で展開されるということなんです。つまり、この4小節のコード進行をしっかり頭と指に入れておけば、リードもアルペジオもアドリブも、全部この上で動かせます。
「セーハなしの4コード」が嬉しい理由と、その落とし穴
セーハなしの利点は明確です。指の力が弱い初心者でも音が出しやすい。Fコードのような「人差し指で6本まとめて押さえる」関門がない。これは大きい。
でも、ここに落とし穴があるんですよね。「簡単に音が出る曲」というのは、裏を返せば「下手をごまかせない曲」でもあるんです。歪ませたエレキでパワーコードをかき鳴らす曲なら、多少音が雑でも勢いでカバーできる。でもクリーンなアルペジオは、ピッキングの強弱・音の粒揃え・コードチェンジの間(ま)が、全部むき出しになります。
セーハなしの4コードなら、3日くらいで弾けますよね?
“音を出す”だけならそれくらいで届くと思います。でも”曲として聴かせる”には、もう少し時間がかかるんですよね。簡単な曲ほど、ごまかせないんです。
3回のクラプトン来日公演(1995年福岡/2014年・2016年武道館)を生で観てきて、つくづく思うことがあります。クラプトンが弾く Wonderful Tonight は、毎回少しずつ違う表情をしているんです。それでも一発で「あ、クラプトンだ」と分かる。その理由は、TAB譜にも楽譜にも書かれていない部分にあります。これから、それを4段階に分けて、できるだけ言語化していきますね。
【ステップ1/4】イントロの弾き方|あの有名フレーズを攻略する
結論:イントロはキーGの上で、コード進行 G → D/F# → C → D をなぞるメロディフレーズです。スタジオ版(1977年『Slowhand』収録)を基本に解説します。
このフレーズは「弾けたらモテる代表格」として有名です。だからこそ、ここだけを集中的に練習する人が後を絶たない。でも、JOYMUギタースクールのプロギタリスト MITSU氏は、はっきりこう指摘しています。
Wonderful Tonightのイントロの有名なフレーズばかり練習する人がいるが、そういう人はあまり上手くならない。アルペジオが綺麗に弾けた上でイントロやソロを弾くからカッコいい演奏になる(JOYMUギタースクール/MITSU氏)
身も蓋もないんですが、本当にその通りなんです。なので、この記事では順番にこだわります。「イントロが先」ではなく「イントロも、その先のステップ2のアルペジオがあってこそ」と覚えておいてほしいです。
えー、でもイントロのフレーズだけ弾ければ、女子の前で格好つけられますよね?
気持ちはわかります。僕も若い頃、まったく同じ動機でやってました(笑)。でも、イントロだけ弾ける人って、結局そこで止まっちゃうんですよね。「じゃあ続き弾いて」と言われた瞬間に、ボロが出ます。
イントロ8小節の運指と押弦のコツ
著作権の関係で全TAB譜は載せられませんが、要点を文字でお伝えします。基本的に1〜3弦の上の方(10F前後)ではなく、3〜1弦の3〜5フレット周辺と、2弦の8Fを中心に動くフレーズです。
- 1小節目(Gコード上):3弦・2弦・1弦の3F〜5F付近を中心に、Gコードトーン(G・B・D)と隣接する音を行き来する
- 2小節目(D/F#コード上):1弦の2F・3F付近、2弦3F・5F付近を使い、Dコードのトーン(D・F#・A)に着地する
- 3小節目(Cコード上):1弦・2弦の解放弦と1F〜3Fを組み合わせ、Cコードトーン(C・E・G)に着地する
- 4小節目(Dコード上):再びDコードトーンへ戻り、半小節分のチョーキング+ビブラートで余韻を残してコード弾きへ移る
市販のTAB譜を持っている方は、それを見ながら「コード進行のどこに音が乗っているか」を意識するだけで、運指の理解度が一段上がります。「丸暗記」ではなく「コードの上で動いている」と捉えることで、後でアドリブにも応用できるようになるんですよね。
ピッキングは、ピックでも指でも構いません。ただし強弱を3段階(弱・中・強)でコントロールする意識を持ってください。原曲を聴くと、フレーズの頭は柔らかく、終わりに向かって少しだけ強く弾いているのが分かります。
つまずきポイント①:D/F# の押さえ方
初心者がここで止まる人、本当に多いです。でも安心してください。D/F#は通常のDコードに、6弦2フレット(F#音)を足すだけです。名前ほど怖くありません。
| パターン | 押さえ方 | 向いている人 |
| 親指巻き込み | 左手の親指でネック上から6弦2Fを押さえる | 手が大きめ/ロック・ブルース志向 |
| 中指で押さえる | 通常Dの中指(1弦2F)を維持しつつ、別の指で6弦2Fを押さえる | クラシカルな運指を好む方 |
| ベース弦を弾かない | D/F#の指定があっても、5弦5Fまたは6弦をミュートして実質Dとして弾く | 弾き語りで歌に集中したい方 |
クラプトン本人は親指巻き込みパターンが多いです。ただ、無理に真似しなくても大丈夫。弾き語りで歌に集中したい方は、3つ目のパターン(ベース音を省く)で十分曲として成立します。「正解はひとつじゃない」と知っておくだけで、無駄な挫折を回避できますよね。
つまずきポイント②:チョーキングの「溜め」
イントロの中盤〜終盤で出てくるチョーキングは、ハードロックの速いベンディングとは別物です。“音を歌わせるように”ゆっくり持ち上げるのが大事。具体的なニュアンスのコツは「クラプトンらしく弾く3つのコツ」のセクションで詳しくお伝えしますね。
【ステップ2/4】アルペジオでのバッキング|実はここが本体
結論:Wonderful Tonightで一番大事なのは、ヴァース(A1/A2)でのアルペジオ・バッキングです。ここを丁寧に弾けるかどうかで、曲全体の印象が9割決まります。
これは僕が25年弾いてきて、辿り着いた結論です。そして、僕だけの意見ではありません。複数のギター講師が同じことを言っています。
Wonderful Tonightはピッキングアルペジオの練習には最適。右手の固定がポイント(ameblo.jp/powerguitarlist)
ギターソロもアルペジオも練習できる中級者におすすめの曲(大分中村ギター教室)
つまり、この曲を本当に攻略したいなら、イントロやソロを練習する前に、まずヴァースのアルペジオを丁寧に弾けるようになるのが最短ルートなんです。順番が逆だと、どうしてもチグハグな演奏になっちゃうんですよね。
「アルペジオが本体」って、私みたいに弾き語り目指してる人にこそ大事ってことですか?
そうなんです。歌を乗せるのは、このアルペジオの上ですから。逆にリード派の方も、バンドにベースやキーボードがいない編成なら、アルペジオで土台を作れる方が圧倒的に呼ばれますよ。
右手の安定が9割|ピッキングパターンの基本
まずは指弾き(フィンガーピッキング)パターンの基本形をお伝えします。役割分担はこうです。
- 親指(p):ベース弦(6弦・5弦・4弦のいずれか、コードのルート音)
- 人差し指(i):3弦
- 中指(m):2弦
- 薬指(a):1弦
1拍目に親指でベース弦、2〜4拍目で「3弦→2弦→1弦」または「3弦→1弦→2弦」のように高音弦を順次つまんでいく。これを基本パターンとして、コードチェンジに合わせて繰り返します。
ピックを使う場合は、ハイブリッドピッキング(親指でピック、残りの指で高音弦)か、オルタネイト・ピッキングで隣接弦を順に弾く方法が選べます。クラプトン本人はピックを使いつつ、必要に応じて中指・薬指を補助的に使うスタイルです。
右手の手首をブリッジに軽く触れて固定すること。これだけで音の粒が劇的に揃います。BPM60の遅いテンポから始めて、各弦が同じ音量で鳴っているかをスマホで録音してチェックする。地味ですが、これが一番効きます。
各コードのアルペジオフォーム(G / D / C / Em / D/F# / Bm)
各コードでベース弦が異なります。ここを最初に整理しておきましょう。
| コード | ベース音(親指) | 高音弦(i / m / a) |
| G | 6弦3F(G音) | 3弦解放/2弦解放/1弦3F |
| D | 4弦解放(D音) | 3弦2F/2弦3F/1弦2F |
| C | 5弦3F(C音) | 3弦解放/2弦1F/1弦解放 |
| Em | 6弦解放(E音) | 3弦解放/2弦解放/1弦解放 |
| D/F# | 6弦2F(F#音) | 3弦2F/2弦3F/1弦2F |
| Bm | 5弦2F(B音) | 3弦4F/2弦3F/1弦2F(簡略版) |
Bmはセーハ(バレー)が必要なフルフォームではなく、上記のように高音側だけ押さえる簡略版で十分曲として成立します。アルペジオ用途なら無理にセーハする必要はないんですよね。
つまずきポイント③:Bm→Em のコードチェンジ
BanMusicも指摘していますが、サビ前後の Bm → Em のコードチェンジは、この曲の地味な難所です。指の形がガラッと変わるため、初心者は必ずここで一拍遅れます。
コツは「指を全部離さない」こと。Bm(簡略版)で押さえている指のうち、2弦3F・1弦2Fを支点として残し、他の指だけ動かす意識を持つと、移動距離が激減します。
動かす指は最小限。残せる指は残す。これだけでスムーズさが3倍変わります。実は僕も最初はガッシャンと指を全部離して持ち替えていて、半年くらい遠回りしました。
音の粒を揃える練習法
遅いと感じるくらいでちょうどいいです。最初は退屈ですが、ここを飛ばすと一生雑な演奏になります。
4小節を1ループにして、各コード4拍ずつ。各弦が同じ音量で鳴っているかに集中してください。
自分の耳で聴くと「弾けてる」気がしますが、録音で聴くと粒が揃っていない箇所が一発で分かります。これが地味に効きます。
原曲のテンポはおおよそBPM84付近。焦らず段階を踏んでください。
【ステップ3/4】ソロの弾き方|スタジオ版とライブ版で別物
結論:Wonderful Tonightのソロは、スタジオ版(Slowhand 1977)とライブ版(Unplugged 1992 / 24 Nights 1991 / 各種ライブ)で構成も尺もまったく違います。どのバージョンをコピーしているのか、まず明確にしてください。これが曖昧なまま練習している人、本当に多いです。
スタジオ版ソロ(Slowhand収録)の特徴と弾き方
スタジオ版のソロは8小節の中に、歌のように完結したフレーズが配置されているのが特徴です。手数は少なく、1音1音にビブラートとチョーキングがしっかり乗っています。
使用スケールは Gメジャーペンタトニック(G・A・B・D・E)を中心に、要所で第3音「B」を強調します。具体的なポジションは、3弦7F付近〜1弦15F付近のいわゆる「Gメジャーペンタトニック2ndポジション」を使用しています。
- ソロ冒頭:高音弦の12F〜15F付近で、ゆったりとフレーズを始める
- 2小節目以降:1音チョーキング(1音半ではなく1音分のフルベンド)を連続で使う
- 後半:少しずつポジションを下げ、コード進行に沿って着地音を変える
- ラスト:ロングトーンにビブラートを長くかけて、歌に戻る
細かい運指はTAB譜で確認してほしいですが、「フレーズ単体ではなく、コード進行のどこに着地しているか」を意識すると、丸暗記から一歩抜け出せます。たとえばCコードの上ではC・E・Gの構成音に着地する、Dコードの上ではD・F#・Aに着地する、といった具合です。
ライブ版ソロ(Unplugged 1992)の特徴
1992年の Unplugged 版は、アコースティックギターでの演奏です。基本的なフレーズの骨格はスタジオ版と似ていますが、アコギ特有の「弦のテンション」と「サスティン(音の伸び)の短さ」を計算したフレージングになっています。
具体的には、エレキでの「持続するチョーキング」が、アコギだと音が早く減衰するため、チョーキングの代わりにスライドやハンマリングオン/プリングオフを使う場面が増えます。アコギ派の方はこちらをコピーする方が指の形が合いますよ。
ライブ版ソロ(24 Nights / 近年の来日公演)の特徴
1990〜91年の Royal Albert Hall 公演を収めた『24 Nights』や、その後のツアーでのライブ版は、8小節ソロ+アウトロソロの2部構成が定番です。アドリブ要素が大幅に増え、毎回違うフレーズが出てきます。
2014年2月、僕は武道館で当時69歳のクラプトンを観ました。Wonderful Tonight ではないんですが、同じ公演の「Crossroads」のソロで、彼は17フレットの高音域に左手が駆け上がっていったんです。足元にはワウくらいしかなかったのに、指1本1本のタッチであの太い音を出していました。
あの時に確信しました。ライブ版のクラプトンは「フレーズを正確に再現する」のではなく「その日の自分の指で再構築している」と。だからライブ版のコピーは、フレーズ通りに弾けることをゴールにせず、ニュアンスとポジションの感覚を盗む方が有意義です。
Gメジャーペンタトニックで遊ぶ|アドリブ入門
ソロの完コピができるようになったら、ぜひGメジャーペンタトニックでのアドリブに挑戦してみてほしいです。Wonderful Tonight は、アドリブ練習教材としても定評があります(hobbyguide.jp 等でも紹介されています)。
覚えるべきポジションは、最初はひとつだけで十分。3弦7F〜6弦3Fの範囲でGメジャーペンタトニックの音を体に入れます。あとは伴奏(自分でアルペジオを録音してもいいし、YouTubeのカラオケ音源を使ってもOK)の上で、まずは1拍ごとに1音だけ音を選んで弾く。
アドリブは「速く弾く競技」ではなく「歌うこと」です。声に出して歌えるフレーズしか、ギターからも出てきませんよ。
【ステップ4/4】音作り|クリーントーンの基本セッティング
結論:Wonderful Tonight に必要なのは、歪まない、薄っすらと空気感のあるクリーントーンです。エフェクターで作り込もうとすると、かえって遠回りします。
これは、僕が2014年の武道館でクラプトンの足元を凝視して確信したことなんです。
2014年2月の武道館公演(20回目の来日)。当時69歳のクラプトンは黒の半袖シャツにジーンズというラフな格好で出てきて、「Crossroads」ではあの分厚いリードトーンを聴かせました。でも、足元を見たんです。ほぼワウだけ。歪み系のエフェクターはほとんど踏んでいない。それでもストラトキャスター本来のクリーンなトーンに、あの説得力が乗っていました。
クラプトンのシグネチャーモデル「Fender Eric Clapton Stratocaster」は、Vintage Noiselessピックアップ3基にTBX回路と25dBアクティブ・ミッドブーストを搭載しています。あの分厚くて甘いトーンの正体は、エフェクターではなくギター本体のミッドブースト回路と、何十年も弾き込んだ指先のタッチから生まれているんですよね。
クラプトンのクリーントーンを再現するアンプセッティング
家庭用の小型アンプ(Fender Mustang、BOSS Katana、VOX AC10 など)でも、ある程度の再現は可能です。目安はこんな感じ。
| つまみ | 目安 | 狙い |
| チャンネル | クリーン | 歪ませない |
| ゲイン | 3〜4 | 軽くアタック感を出す程度 |
| ベース | 4〜5 | 低域を出しすぎない |
| ミドル | 6〜7 | クラプトンらしい中音域の太さの要 |
| トレブル | 5〜6 | キラキラさせすぎない |
| マスターボリューム | 3〜5 | 家なら3、スタジオなら5 |
ポイントはミドル(中音域)を上げること。日本のギタリストは中音域を削りがちですが、クラプトン的なトーンはミドルが命です。
リバーブとコーラスの使い方|薄くかけるのが正解
リバーブは プレートまたはホールで20〜30%程度。深くかけすぎると、ロマンチックを通り越して「カラオケのエコー」になります。
コーラスは、ぶっちゃけ使わなくてもOKです。クラプトンは時期によって使ったり使わなかったりですが、Wonderful Tonightのスタジオ版にはコーラス感はほぼありません。使う場合もデプス(深さ)は最小限にしてください。
ピックアップの選択|なぜハーフトーンが鉄板なのか
ストラトキャスターを使う場合、センター+フロント(ピックアップセレクター位置2)のハーフトーンが鉄板です。透明感がありながら、フロント単体ほど甘くなりすぎない。アルペジオの音の分離も良くなります。
イントロやソロのリードパートは、フロント単体(位置1)に切り替えて甘さを足すのもアリ。リアは原則使いません。Wonderful Tonightにあのジャキッとした硬い音は要らないので。
アコギで弾く場合の音作り
弾き語りでアコギを使う方は、フォスファーブロンズのライトゲージがおすすめです。テンションが強すぎず、アルペジオの粒立ちが綺麗に出ます。Martin SP Lifespan、Elixir NANOWEB あたりが定番。
ピックを使うか、指弾きかは好みですが、原曲のニュアンスに近づけたいなら指弾き(フィンガーピッキング)を推奨します。爪を少し伸ばしておくと音にハリが出ますよ。
結局、Eric Clapton Stratocaster買わないと、本物の音は出せないんですよね?
そう思いがちなんですけど、僕は逆だと思ってるんです。手持ちのギターでクラプトンっぽい音にどこまで近づけるかを試行錯誤する過程こそが、上達の本体なんですよね。機材を買う前に、まず指でどれだけトーンを変えられるかを試してみてほしいです。
クラプトンらしく弾く3つのコツ|TAB譜の先にある世界
結論:TAB譜が示すのは「音の位置」だけです。クラプトンらしさは、ビブラート・チョーキング・”間”の3つのニュアンスに宿っています。ここがこの記事で一番お伝えしたいパートです。
3回の来日公演(1995年福岡/2014年・2016年武道館)を通じて、僕はクラプトンの音色が時代によって大きく変わるのを耳で確認してきました。1995年の From the Cradle ツアーは「ブルース全振りの攻撃的なドライブサウンド」、2014年は「クリーンで洗練された都会的なトーン」、2016年は「枯れた味わいのブルージートーン」。同じストラトキャスターを使っているのに、別人の音に聴こえるくらい違ったんです。
でも、不思議なことに「これはクラプトンだ」と一発で分かる芯の部分は、20年間変わっていなかった。その芯こそが、これからお話する3つのコツです。
音楽メディア『ヤングギター』も、2025年4月の武道館公演レポートでこう書いていました。
ギター・プレイに関して言えば、昔ほどは指が動かなくなった。従来得意としていた速くて畳みかけてくるようなフレーズから成るソロは、あまり聴けなくなった。ミスもいくつか目立った。しかし彼はそういうことをすべて超越していた(ヤングギター/武道館公演レポートより)
「すべてを超越する」――この一文に、3つのコツの本質が詰まっています。
コツ①|ビブラート|幅は狭く、速度はゆっくり
クラプトンのビブラートは、幅が狭く、速度がゆっくりです。速くて細かい「シュレッド系」のビブラートとは正反対。1音を「歌わせる」イメージです。
練習法:Gコードの3弦7F(D音)を1音だけ出して、5秒間ビブラートをかけ続けてみてください。最初は手首が疲れて続きません。続けて、その「ゆらぎ方」が原曲のクラプトンに近いか、原曲を聴き比べながら微調整します。
ポイントは「指先だけ揺らす」のではなく、手首から肘までを使ってゆっくり揺らすこと。これがクラプトン特有の「歌うような」音の揺らぎを生みます。
コツ②|チョーキングの「溜め」と「戻し」
クラプトンのチョーキングは「ベンドアップ → ベンドダウン」のタイミングが独特です。
- ベンドアップは”ゆっくり”。狙った音に一気に持ち上げず、半分まで上げて一瞬「溜め」を作ってから、目標音に到達させる
- 戻しは”音を切らずに”。ベンドアップの音価をきっちり保ってから、ゆっくり元の音まで戻す
- ベンドピッチを”狙った音の手前で一瞬止める”。これが「歌うような」ニュアンスの正体
ハードロック的な「シャクリ上げ」とはまったく違うアプローチです。“音を擬人化する”イメージを持ってみてほしいです。音が呼吸しているように動かす、と言えば伝わるでしょうか。
コツ③|音を弾かない「間」の美学
これが一番大事です。クラプトンらしさの正体は、弾いている音ではなく、弾いていない瞬間にこそある。
スタジオ版 Wonderful Tonight のソロを、ストップウォッチを使って分析してみてほしいです。8小節中、実際に音を出している時間は半分以下です。残りの半分は、「次の音をどう聴かせるか」を計算した沈黙なんですよね。
初心者ほど「休符が怖い」と感じます。何か弾いていないと不安になる。でも、クラプトンに憧れて弾くなら、まず「弾かない勇気」を身につけてほしいです。
ギターは速く弾けるかじゃなくて、何を弾かないかで決まる。これは僕が25年かかって、ようやく腑に落ちた言葉なんですよね。
弾き語り派 vs リードギター派|あなたはどちらを目指すか
結論:Wonderful Tonightを弾く目的は人それぞれですが、「弾き語り派」と「リードギター派」では、練習の優先順位がまったく違います。両方やる選択肢もありますが、まずはどちらかに絞った方が遠回りしません。
私、弾き語りを目指してたんですけど、ソロも弾けたら格好いいですよね?両方やった方がいいですか?
両方できると最強です。でも経験上、最初から両方やろうとすると、どっちも中途半端になって挫折するパターンが多いんですよね。まずは片方に絞った方が、結果的に早く両方できるようになりますよ。
弾き語り派の練習優先度
歌に集中できる演奏レベルになるまでアルペジオを反復。ここが土台です。
特に Bm → Em と D → D/F# を、メトロノームに合わせて止まらず移動できることを目標に。
歌の前にイントロを弾き出しでつけられると一気に「曲」になります。ここはオプションでOK。
リードギター派の練習優先度
運指・ピッキングニュアンスを含めて、原曲と一緒に弾いて違和感がないレベルを目指します。
ライブ版ではなくスタジオ版から。骨格が明確で、フレーズが完結しているため練習素材として最適です。
バンドにベース・キーボードがいない編成では、これができないと曲が成立しません。リード派でも避けて通れない部分です。
Gメジャーペンタトニックでアドリブできるようになると、曲の楽しみ方が一気に広がります。
両方やる場合の順番
欲張りな方(僕もそうでした)は、必ずアルペジオから始めてください。土台が固まる前にイントロやソロに手を出すと、曲全体のバランスが崩れます。アルペジオが安定してから、その上にイントロ→ソロの順で積み重ねていく。これが最短ルートだと思います。
レベル別練習ロードマップ|初心者・中級者・上級者
結論:自分のレベルに合った練習をすることが、上達の最短ルートです。背伸びしすぎても、簡単すぎても、伸びは止まります。
僕自身、ギターを始めて最初の10年は完全に遠回りしました。基礎を飛ばしてシュレッドの練習ばかりしていたせいで、リズム感が壊滅。「3日でプロ級」系の教材に15万以上つぎ込んだこともあります(全部ゴミでした)。その失敗の積み重ねの結論として、レベルに応じた練習が一番効率的だと言い切れます。
初心者(〜半年)|まずはアルペジオで通す
| 項目 | 内容 |
| 練習メニュー | G・D・C・Em のアルペジオ/コードチェンジ/D/F# の習得 |
| 期間目安 | 1〜2ヶ月(毎日15分以上) |
| 達成基準 | BPM72で、最初から最後まで止まらず通せる |
| NG | イントロやソロに手を出す(ここで広げると挫折します) |
中級者(半年〜2年)|イントロ+スタジオ版ソロ
| 項目 | 内容 |
| 練習メニュー | イントロ8小節の完コピ/スタジオ版ソロ8小節の完コピ/ビブラートとチョーキングのニュアンス |
| 期間目安 | 2〜4ヶ月 |
| 達成基準 | 原曲と一緒に弾いて違和感がない |
| 追加課題 | クリーントーンの音作りに踏み込む |
上級者(2年〜)|ライブ版ソロ+アドリブ応用
| 項目 | 内容 |
| 練習メニュー | 『24 Nights』など各ライブ版ソロのコピー/Gメジャーペンタトニックでのアドリブ/弾き語り+リードの一人二役 |
| 期間目安 | 継続課題(終わりなし) |
| 達成基準 | 自分なりのソロを毎回違うフレーズで弾ける |
| 追加課題 | 結婚式・パーティ等での演奏 |
レベルを飛び越そうとして、結果10年遠回りしたのが昔の僕です。本当に、急がば回れなんですよね。
つまずきポイントFAQ|よくある質問への回答
- D/F#が押さえられません。Bmっぽくなってしまいます。
-
通常のDコードに6弦2Fを足すだけ、と捉え直してみてほしいです。それでも難しければ、6弦をミュートして実質Dとして弾いても、弾き語りでは十分曲として成立します。最初から完璧を目指さなくて大丈夫です。
- アルペジオの右手が安定しません。
-
右手の手首をブリッジに軽く触れて固定してみてください。それと、BPM60まで落として「速さを諦める」のも有効です。速く弾こうとするから不安定になるので。
- スタジオ版とライブ版、どちらをコピーするべきですか?
-
初〜中級者はスタジオ版(Slowhand 1977)一択です。フレーズが完結していて練習素材として最も良くまとまっています。ライブ版はアドリブ要素が強いので、上級者向けと考えてください。
- ピックと指弾き、どっちがいいですか?
-
原曲のニュアンスに近づけたいなら指弾き、力強く鳴らしたいならピック、両方使いこなしたいならハイブリッドピッキングがおすすめです。クラプトン本人はピック+指の併用スタイルが多いです。
- クリーントーンが薄く感じます。何を足せばいい?
-
エフェクターを足すより先に、アンプのミドル(中音域)を6〜7まで上げてみてください。日本人ギタリストは中音域を削りがちですが、クラプトンのトーンは中音域が命です。それでも物足りない場合だけ、薄いリバーブを20〜30%追加します。
- 何ヶ月で弾けるようになりますか?
-
「弾き語りで通して弾く」レベルなら、毎日15分の練習で1〜2ヶ月。「イントロ+ソロもコピー」だと3〜6ヶ月。「クラプトンらしく弾ける」までは、正直に言うと年単位の継続が必要です。でも、継続すれば確実にそこまで行けます。
- クラプトンモデルのギター(Eric Clapton Stratocaster)じゃないとダメ?
-
絶対にダメではありません。手持ちのギターで「指でどこまでトーンを変えられるか」を試行錯誤する過程こそが上達の本体です。シグネチャーモデルが欲しくなるのは、実力が機材に追いついてからで遅くないです(経験者談)。
まとめ|今日から始める3ステップ
長くなりましたが、お伝えしたかったのはシンプルです。Wonderful Tonightは「セーハなしの4コードでお手軽に弾ける曲」と紹介されがちですが、実は「弾ける」と「いい音で響かせる」の間にこそ、深いギターの世界が広がっている曲なんですよね。
4段階のロードマップで、もう一度整理します。
- ステップ1:イントロ あの有名フレーズを、コード進行の上でなぞる
- ステップ2:アルペジオ(本体) ヴァースのバッキングを丁寧に、右手の安定を最優先で
- ステップ3:ソロ まずスタジオ版から。ライブ版はアドリブ要素ありの上級課題
- ステップ4:音作り ミドル中心のクリーントーン。エフェクターより指のタッチ
そして「クラプトンらしく弾く3つのコツ」――ビブラートはゆっくり、チョーキングは溜めて、音と音の”間”を恐れない。これがTAB譜の先にある世界の入口です。
今日できること(5〜10分)
ギターを手に取って、G・D・C・Em のアルペジオを BPM60 で2周してみてください。これだけで、土台作りの第一歩は踏み出せます。
今週できること(毎日15分)
イントロの最初の4小節(G→D/F#→C→D)を、ピックアタックの強弱を意識しながら通します。スマホで録音して、自分の音を客観的に聴いてみてほしいです。
今月できること
曲全体を、アルペジオでバッキングしながら、最初から最後まで通して弾いてみる。完璧でなくていいです。「通す」ことに価値があります。
Wonderful Tonightは、ギターを長く続ける旅の、最高の道連れになる曲だと僕は思います。25年経ってもまだ「もっといい音で弾けるかも」と思える曲って、なかなか出会えないんですよね。あなたにとってもそんな1曲になることを願っています。
大丈夫です。10年遠回りした僕でもここまで来れたんですから。あなたのペースで、一歩ずつ歩いてみてほしいです。
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