【実践法あり】ジョン・フルシアンテの瞑想法をギター練習に活かす

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ジョン・フルシアンテは、かつてジミ・ヘンドリックスの10分間のギターソロを記憶するのに30日かかっていた。

それが、ある習慣を取り入れてからは2〜3日に短縮された。

速弾きの練習を死ぬほどやったわけじゃない。高額な機材に買い替えたわけでもない。彼がやったのは、目を閉じて、呼吸に意識を向けること。つまり――瞑想だ。

SNSでフルシアンテの名前を検索すると、こんな声をよく見かける。「ストラト+マーシャル+DS-2で組んだけど全然あの音にならない」「あの枯れた音はヴィンテージストラトとジョンの指じゃないと出ない」。機材を揃えても再現できない「何か」がある、という声だ。

25年ギターを弾いてきた俺も、その「何か」の正体がずっとわからなかった。機材の問題だと思っていた時期もある。でも今は確信している。フルシアンテの音の核心は、機材ではなく集中力と感受性にある。そしてそれを研ぎ澄ました方法こそ、瞑想だったんだ。

「瞑想? なんか怪しいやつでしょ」と思った人、ちょっと待ってほしい。この記事を最後まで読めば、その認識はたぶん変わる。瞑想は怪しいスピリチュアルなんかじゃない。Google、Apple、Intelといった世界的企業が社員研修に取り入れている、科学的に効果が認められた集中力のトレーニングなんだ。

この記事では、フルシアンテが実践する「ヴィパッサナー瞑想法」の本質と、それがギター演奏にもたらした驚異的な変化、そしてギタリストが今日から練習に組み込める具体的な瞑想のやり方を紹介する。速弾きやエフェクターの前に、まず「聴く力」を鍛えてみないか。

目次

ジョン・フルシアンテが実践する「ヴィパッサナー瞑想法」とは

結論から言う。ジョン・フルシアンテが取り入れている瞑想法は「ヴィパッサナー瞑想」だ。

フルシアンテ本人は、ギター・マガジン(2006年6月号)のインタビューでこう語っている。

「瞑想の習慣によって俺の練習時間は飛躍的に充実した。すべてのギタープレイヤーに推奨する」

「すべてのギタープレイヤーに推奨する」。ジョン・フルシアンテがここまで断言するのは珍しい。彼は基本的に、自分のやり方を他人に押し付けるタイプの人間じゃない。それでもこう言い切ったということは、瞑想がそれほど劇的に彼の音楽人生を変えたということなんだと思う。

では、ヴィパッサナー瞑想とは一体何なのか。なぜ「怪しい」と思われがちなのか。順番に解説していく。

ヴィパッサナー瞑想の基本――「あるがままに観る」とは

ヴィパッサナー(Vipassana)は、パーリ語で「ものごとをあるがままに見る」という意味だ。約2500年前、ブッダ(ゴータマ・シッダールタ)が悟りを開いた方法とも言われる、インド最古の瞑想法の一つ。現代で広く知られる「マインドフルネス瞑想」の源流にあたる。

「瞑想」と聞くと、「頭を空っぽにして無になる」みたいなイメージがあるかもしれない。でもヴィパッサナー瞑想はちょっと違う。

核心は、思考を止めることではなく、思考を「観察」することにある。

たとえば、目を閉じて呼吸に意識を向けているとする。30秒もすれば頭の中に雑念が湧いてくる。「あのフレーズまだ弾けないな」「明日の仕事どうしよう」「腹減ったな」。普通はこの雑念に引っ張られてしまうんだけど、ヴィパッサナーではその雑念を「雲が流れるように眺める」だけでいい。良いとも悪いとも判断せず、ただ「あ、雑念が浮かんだな」と気づいて、静かに呼吸に戻る。

これをギター練習に置き換えてみるとわかりやすい。

弾けないフレーズにぶち当たった時、普通は「なんで弾けないんだ」「もっと速く指を動かさないと」と焦る。でもヴィパッサナー的なアプローチは違う。「今、自分の薬指がどこでつまずいているか」をありのまま観察する。焦りに飲み込まれるんじゃなく、冷静に今の状態を見つめる。たったこれだけのことが、練習の質を根本から変えるんだ。

えっ、でも瞑想って座禅組んで「ウーン」とか言うやつでしょ? なんかお寺っぽいというか、宗教っぽいというか……

その気持ちはよくわかるよ。俺も最初はそう思ってた。でも実態はかなり違うんだよね。次のセクションで、なぜ「怪しくない」のか説明するから

なぜ「怪しい」と思われるのか? GoogleやAppleも取り入れる科学的メソッド

「瞑想は怪しい」。そう思う気持ちは痛いほどわかる。俺だって最初は半信半疑だった。仏教由来だし、10日間沈黙して座り続けるとか言われたら、そりゃ身構えるのが普通だ。

でも、ちょっとこの事実を見てほしい。

  • Google:社内プログラム「Search Inside Yourself(SIY)」としてマインドフルネス瞑想を導入。数千人の社員が受講
  • Apple:社内に瞑想ルームを設置。スティーブ・ジョブズも禅の実践者だった
  • Intel:「Awake@Intel」プログラムで、社員の集中力と創造性の向上を確認
  • Nike・Goldman Sachs・メルカリ:いずれもマインドフルネスを社内研修に導入済み

世界を動かしている企業のトップたちが、スピリチュアルなものにお金と時間をかけるだろうか? かけない。彼らが投資しているのは、科学的に効果が実証された「集中力と創造性を高めるトレーニング」としての瞑想だ。

ハーバード大学の研究では、8週間のマインドフルネス瞑想によって、脳の灰白質(記憶・学習・感情調整に関与する領域)の密度が増加することが確認されている。また、ウィスコンシン大学の研究では、瞑想の実践者は非実践者と比べて注意力の持続時間が有意に長いという結果が出ている。

要するに、瞑想は「怪しい」のではなく「知られていない」だけなんだ。フルシアンテはそれを2500年前の伝統的な方法で取り入れた。Google社員はそれをモダンなプログラムとして取り入れた。形は違えど、やっていることの本質は同じ。「今この瞬間に意識を向ける練習」だ。

ジミヘンのソロを30日→2〜3日で記憶――瞑想がもたらした驚異的な変化

ここからは、瞑想がフルシアンテの音楽にどんな変化をもたらしたのか、具体的なエピソードを見ていく。

フルシアンテは複数のインタビューで、瞑想を始める前と後で「ギターの練習効率が劇的に変わった」と語っている。中でも最も有名なのが、ジミ・ヘンドリックスのソロコピーに関するエピソードだ。

「以前はジミ・ヘンドリックスの10分間のソロを記憶するのに30日ほどかかっていた。だが瞑想を習慣にしてからは、同じソロを2〜3日で覚えられるようになった」

30日が2〜3日。約10倍のスピードだ。

この話を最初に聞いた時、正直「盛ってるだろ」と思った。でもよく考えてみると、これは「暗記力が上がった」という単純な話じゃないんだよね。フルシアンテ自身がこう説明している。「音楽を感知する能力が研ぎ澄まされた」と。

音楽メディアReal Soundは、2023年の東京ドーム公演でのフルシアンテをこう評している。

「一音だけでどこまでも飛べるような”泣きのギター”から、エディ・ヴァン・ヘイレンを彷彿とさせる速弾きまで、実にナチュラルに繋げて弾き倒してみせる。”ギターソロの魅力全出し”と言ってもいい、泣きながら火を吹くプレイ」

「泣きながら火を吹くプレイ」。すごい表現だけど、フルシアンテのギターを聴いたことがある人なら「まさにこれだ」とうなずくはず。この「泣き」と「火」を自在に行き来できるのは、技術だけの問題じゃない。音楽のその瞬間瞬間に完全に没入している――つまり、極限の集中状態にいるからこそできることなんだと思う。

「音楽を感知する能力」とは何か

フルシアンテが言う「音楽を感知する能力が研ぎ澄まされた」という言葉。これが瞑想の効果を理解する上で最も重要なキーワードだと思う。

通常のギター練習は、どうしても「外側からのアプローチ」になりがちだ。「このフレーズを弾けるようになるまで繰り返す」「テンポを少しずつ上げる」「指の形を矯正する」。もちろんこれは大事。でもフルシアンテが瞑想で得たのは、これとは違う「内側からのアプローチ」だった。

瞑想によって「聴く力」が研ぎ澄まされると、音楽の中にある微細な構造――メロディの流れ、和音の色彩、リズムのうねり――がクリアに聞こえるようになる。ジミヘンのソロを「10分間の音の連続」として暗記するんじゃなく、「音楽の流れ」として体感的に理解できるようになった。だから30日が2〜3日に縮まったんだと思う。

これは俺自身の経験でもちょっと思い当たることがある。ギターを始めて15年くらいの頃、師匠に「お前は弾いてるけど聴いてない」と言われたことがあるんだ。当時は意味がわからなかった。でも今ならわかる。指を動かすことに意識が集中しすぎて、自分の出している音を本当の意味では聴いていなかった。「弾く」と「聴く」は別の行為なんだよね。瞑想は、この「聴く」の感度を上げるトレーニングなんだと思う。

半年で6枚のソロアルバム――瞑想と生産性の関係

フルシアンテの瞑想効果を示すもう一つの驚異的な事実がある。

2004年から2005年にかけて、彼は約半年の間に6枚のソロアルバムをリリースしている。

普通、1枚のアルバムを作るのに数ヶ月〜1年以上かけるミュージシャンがほとんどだ。それを半年で6枚。しかも、いずれも「やっつけ仕事」ではなく、実験的で深みのある作品ばかり。この異常な生産性は、瞑想による集中力の飛躍的な向上と無関係ではないはずだ。

実際、この時期のフルシアンテは瞑想を日常的に実践しており、レッチリの次作『Stadium Arcadium』(2006年)の制作でも、スタジオ入り前の6ヶ月間は瞑想を重点的に行っていたとTotal Guitar誌のインタビューで語っている。

SNSやレビューサイトでは「ジョンが戻ったレッチリは別物」「ジョンのギターがあってこそのレッチリ」という声が圧倒的に多い。ジョシュ・クリングホッファー期のレッチリも素晴らしかったけれど、「やっぱりジョンじゃないと」という声が溢れるのは、単なるノスタルジーじゃないと思う。瞑想によって研ぎ澄まされた集中力と感受性が、彼の演奏を唯一無二のものにしている。

LIM PRESSは2024年の東京ドーム公演をこうレポートしている。

「ミニマルサイケなジョンのギターがジャムセッションの軸になっていた。彼らの生み出す最強のグルーヴにたまらず発狂にも似た歓声を上げるオーディエンス。健全なトリップ状態を自覚するこの瞬間がたまらなく好きだ」

「健全なトリップ状態」。まさに瞑想が目指す「深い没入」そのものだ。フルシアンテのギターが観客を「トリップ状態」に導けるのは、彼自身がその集中の極みにいるからなんだと思う。

フルシアンテと瞑想の出会い――どん底からの復活劇

フルシアンテが瞑想を始めた背景には、壮絶な過去がある。

1992年、レッチリの絶頂期に彼はバンドを脱退。その後、深刻なドラッグ依存に陥った。詳細には触れないけれど、90年代半ばの彼は音楽どころか、日常生活すら困難な状態だった。ギターを弾くことさえできない時期があった。

1998年、友人たちの助けもあってリハビリを開始。そこから音楽への復帰を目指す過程で出会ったのが、ヴィパッサナー瞑想だった。

瞑想が彼の命を救った、というのは大げさかもしれない。でも、瞑想が「音楽への集中力を取り戻す助け」になったことは確かだろう。ドラッグで乱れた精神を、「今この瞬間に意識を向ける」という瞑想の練習が、少しずつ整えていった。

そして1999年、彼はレッチリに復帰。翌年リリースされた『Californication』は、あの「枯れたギタートーン」の原点にして最高傑作との呼び声高い名盤となった。地獄を潜り抜けた人間が弾く音には、テクニックだけでは出せない「何か」がある。その「何か」を、瞑想が引き出したんだと思う。

こんな経験はないかな? ギターが弾けなくて、練習がつらくて、「もうやめようかな」と思った夜。俺はある。何度もある。フルシアンテほど壮絶じゃないにしても、どん底から這い上がった経験は、ギタリストなら誰でも一つくらい持っているはずだ。そしてそこから立ち直る時に必要なのは、新しいテクニックでも高い機材でもなく、自分の内側と向き合う時間なのかもしれない。

レッチリメンバーと瞑想――アンソニーも実践者

実はフルシアンテだけじゃない。レッチリのボーカル、アンソニー・キーディスもヴィパッサナー瞑想の実践者だ。

アンソニーも自身の薬物依存との闘いを経て、瞑想を精神的な支柱にしている。自伝『Scar Tissue(アンソニー・キーディス自伝)』では、彼の壮絶な人生とバンドの内幕が赤裸々に綴られている。レッチリというバンドのメンバーが複数、瞑想を実践しているという事実は興味深い。バンド全体の音楽的な深み、特にライブでの異常なグルーヴ感の背景には、メンバー個々のメンタルの鍛錬があるんだと思う。

ちなみに、瞑想を実践する著名ギタリストはフルシアンテだけではない。マハヴィシュヌ・オーケストラのジョン・マクラフリン、キング・クリムゾンのロバート・フリップも、瞑想が自身の音楽に不可欠だと公言している。いずれも「テクニックだけでは説明できない深み」を持つギタリストだ。偶然ではないと思う。

瞑想がギター練習の質を変える3つの理由

ここまでフルシアンテの話をしてきたけど、「すごいのはわかった。でも具体的に瞑想が練習にどう効くの?」と思っている人もいるはず。ここでは、瞑想がギター練習の質を変える理由を3つに整理して説明する。

理由①:集中力の持続時間が延びる

瞑想は、端的に言えば「注意力の筋トレ」だ。

呼吸に意識を向けて、雑念が浮かんだら戻す。この「気づいて戻す」の繰り返しが、注意力を鍛える。筋トレでダンベルを上げ下げするのと同じ原理なんだよね。

ギターを練習している時、こんなことがないかな? 30分弾いたあたりでスマホが気になり出す。YouTubeで他の人の演奏動画を見始めてしまう。「この人うまいな……俺なんか全然ダメだ」と落ち込む。気づけば練習時間の半分をスマホに費やしている。

瞑想を習慣にすると、こういう雑念との付き合い方が変わる。雑念が浮かんでも「あ、また気が散ったな」と気づいて、すっと練習に戻れるようになる。1時間の練習の「実質的な集中時間」が、30分から50分に増えるだけで、上達スピードはまるで違ってくるはずだ。

理由②:音への感受性が研ぎ澄まされる

これはフルシアンテの「音楽を感知する能力が研ぎ澄まされた」という言葉と直結する話だ。

瞑想の練習では、呼吸の微細な感覚――鼻の穴に空気が触れる感触、肺が膨らむ動き、吐く息の温度――に意識を向ける。日常では気にも留めない小さな感覚を「聴く」訓練をしているわけだ。

これをギターに置き換えると、自分の出す音の微細なニュアンスに気づけるようになる。ピッキングの強弱による音色の変化、弦のどの位置を弾くかで変わる倍音、ビブラートの深さとスピード。普段は「なんとなく」で流してしまう細部が、くっきりと聞こえるようになる。

フルシアンテの「枯れたトーン」が多くのギタリストに再現できないのは、機材だけの問題じゃない。音の微細なニュアンスをコントロールする感受性の差が、出音の差になっているんだと思う。

つまり、瞑想で「聴く力」が鍛えられることで、自分の音のどこを直せばいいかが見えるようになる……ってことですね?

まさにそう。「弾く」スキルだけじゃなくて「聴く」スキルを鍛えるのが瞑想の役割かな。フルシアンテはそれを本能的にわかっていたんだと思うよ

理由③:「弾けない自分」を受け入れられるようになる

これは地味だけど、個人的には一番大きな効果だと思っている。

ギターの練習中、弾けないフレーズにぶつかると焦る。「なんで弾けないんだ」「もう1ヶ月もやってるのに」「やっぱり才能がないんだ」。こういう思考のループに入ると、練習の質は一気に落ちる。焦りが力みを生み、力みがミスを生み、ミスがさらなる焦りを生む。悪循環だ。

ヴィパッサナー瞑想の「あるがままに観る」を練習に応用すると、この悪循環を断ち切れる。

弾けないフレーズにぶつかった時、「弾けない自分はダメだ」と判断するのではなく、「今、自分の指はこう動いている。ここでつまずいている。力みが入っている」と、ただ観察する。良いとも悪いとも判断しない。事実を見つめるだけ。

これがメタ認知――自分を客観的に見る力だ。焦りを感じた時に「あ、今焦ってるな」と気づけるだけで、その焦りは半分くらいに薄れる。そして冷静に「じゃあテンポを落として、つまずくポイントをゆっくり確認しよう」と建設的な次の一手が打てるようになる。

SNSでよく見る「ジョンの音を再現しようとしたけど出ない」という声。機材を揃えても「あの音」にならない時、多くの人は「もっと高い機材が必要なんだ」と外に答えを求める。でもフルシアンテが瞑想で得たのは、「今の自分の音を、判断せずに聴く」能力だった。出ない音に焦るんじゃなく、今出ている音をありのまま受け入れて、そこから一歩ずつ近づいていく。その姿勢こそが、遠回りに見えて一番の近道なんだと思う。

え、でもさ、「弾けない自分を受け入れる」って、それもう諦めてるってこと?

逆なんだよね。「弾けない」という事実をちゃんと見つめるから、何を直せばいいかがわかる。目をそらして闇雲に繰り返すほうが、よっぽど遠回りになるんだ

ギタリストのための瞑想実践ガイド――今日から始める3ステップ

ここまで読んで「ちょっと試してみようかな」と思ってくれた人へ。ヴィパッサナー瞑想を本格的にやるなら10日間の合宿リトリートがあるけど、いきなりそこに飛び込む必要はない。

まずは、ギター練習のルーティンに瞑想を「3ステップ」で組み込むことから始めてみてほしい。

ステップ①:練習前5分間の呼吸瞑想

これが一番大事。ギターを手に取るに、たった5分間だけ目を閉じる時間を作る。

STEP
椅子に座る(あぐらでもOK)

背筋を軽く伸ばし、肩の力を抜く。手は膝の上に自然に置く。ソファに沈み込むような姿勢はNG。リラックスしつつも、少し背筋が伸びた状態がベスト。

STEP
目を閉じて、鼻から息を吸い、口からゆっくり吐く

4秒で吸って、8秒で吐く。このリズムを基本にして、自分が心地よいペースに調整する。無理に深呼吸しなくていい。自然な呼吸でOK。

STEP
意識を「鼻の先」に集中する

空気が鼻の穴を通る感覚に意識を向ける。吸う時の冷たさ、吐く時の温かさ。ただそれだけに集中する。

STEP
雑念が浮かんだら「気づいて戻す」

30秒もすれば必ず雑念が浮かぶ。「今日の練習メニューどうしよう」「あのフレーズまだ弾けないな」。それでいい。雑念が浮かんだことに気づいたら、静かに呼吸に戻るだけ。この「気づいて戻す」の繰り返しが、集中力のトレーニングそのものだ。

STEP
5分経ったら、ゆっくり目を開ける

タイマーを5分にセットしておくといい。終わったら急に動かず、ゆっくり目を開けて周囲の音を聴く。その「クリアに聞こえる感覚」を持ったまま、ギターを手に取る。

たった5分。これだけで、その後のギター練習の集中度が変わるはずだ。「本当に?」と思うかもしれないけど、まずは1週間だけ続けてみてほしい。

ステップ②:練習中の「音への集中瞑想」

ステップ①の呼吸瞑想に慣れてきたら、次は練習中にも「瞑想的な意識」を持ち込んでみてほしい。

やり方はシンプルだ。ギターを弾きながら、自分の出す音「だけ」に意識を向ける

弦を弾いた時のピックの感触。弦の振動が指先からネックを通じて伝わる感覚。アンプから出てくる音の輪郭、倍音の広がり、残響の消え方。普段は「弾く」ことに精一杯で気にしていないこれらの細部に、意識を向けてみる。

最初は難しい。弾くだけで精一杯だった頃を思い出すかもしれない。でもこれが、フルシアンテの言う「音楽を感知する能力」を自分で体験する方法だ。「弾く」から「聴く」へ、意識のシフトが起きた瞬間、練習の景色が変わる。

おすすめは、クリーントーンで簡単なフレーズを弾くこと。歪みは音の粗さをごまかしてくれるけど、クリーンは全てが聞こえる。ピッキングの強弱、ミュートの甘さ、フィンガリングのノイズ。クリーントーンで「聴く」練習をすると、自分のプレイの解像度がグッと上がるはずだ。

ステップ③:演奏後の「振り返り瞑想」

最後のステップは、練習が終わった後の1分間。

ギターを置いたら、目を閉じて今日の練習を頭の中で振り返る。何がうまくいったか。どこでつまずいたか。どんな感覚だったか。

ポイントは、「判断しない」こと。「あそこがダメだった」と自分を責めるのではなく、「あそこでつまずいた」と事実だけを観察する。うまくいった部分も「やった!」と喜ぶのではなく、「あの時、指がスムーズに動いていた」と冷静に見つめる。

これを毎日1分間やるだけで、自分の練習パターン――どこで集中力が切れるか、どんなフレーズが苦手か、何をやっている時が一番楽しいか――が少しずつ見えてくる。フルシアンテのように「音楽を感知する能力」を日々の練習の中で育てていく方法なんだと思う。

練習前に5分、練習中は音に集中、練習後に1分。合計でも10分もかからないですね。それなら今日からできそうです

そう。瞑想って聞くと身構えちゃうけど、実際はこのくらいシンプルなことなんだよね。大事なのは「毎日やること」。1回10分でも、1ヶ月続けたら300分。その蓄積が効いてくるから

本格的にヴィパッサナー瞑想を学びたいギタリストへ

ここまでの「3ステップ」で十分効果は感じられるはず。でも「もっと本格的にやってみたい」という人のために、フルシアンテが実践しているヴィパッサナー瞑想の「本家」についても触れておく。

ヴィパッサナー瞑想には、10日間のリトリート(合宿)コースがある。世界各地にセンターがあり、日本にも千葉県(ダンマーディッチャ)と京都府(ダンマバーヌ)の2カ所に常設センターがある。

ヴィパッサナー瞑想10日間コースの概要
  • 期間:10日間(朝4時起床、夜9時就寝)
  • ルール:期間中は完全な沈黙を守る(「聖なる沈黙」)。スマホ・本・筆記用具も禁止
  • 費用:参加費は無料(寄付制)。宿泊・食事込み
  • 内容:1日約10時間の瞑想。指導者のガイドに従い、段階的にヴィパッサナーの技法を学ぶ
  • 申込:公式サイト(日本ヴィパッサナー協会)から事前予約制

正直に言う。10日間の沈黙はかなりキツい。普通の人にとってはそれ自体が一種の修行だ。ギターはもちろん触れない。スマホもない。ひたすら自分の呼吸と身体の感覚に向き合い続ける10日間。

でも、フルシアンテはこの体験を経てギター人生が変わった。「すべてのギタープレイヤーに推奨する」と言い切るほどの体験だった。興味がある人は、無理にすぐ参加する必要はないけど、選択肢として知っておくといいと思う。

まずは自宅でできる「3ステップ」から始めて、瞑想が自分に合うかどうかを確かめてみてほしい。もし「もっと深くやりたい」と思えたら、その時にリトリートを検討すればいい。

フルシアンテの音楽やギタープレイをもっと深く理解したい人には、ジョン・フルシアンテ・ファイルがおすすめだ。彼のキャリア・機材・奏法を網羅したファン必携の一冊で、瞑想と音楽の関係をより深く知るきっかけになるはず。また、ギター・マガジン 2022年6月号のジョン復帰特集も、彼の音楽的アプローチを知る上で非常に読みごたえがある。

フルシアンテの瞑想法から学ぶ、ギタリストが本当に鍛えるべきもの

最後に、この記事で伝えたかったことをまとめる。

ジョン・フルシアンテが取り入れたヴィパッサナー瞑想法は、ギター練習の質を根本から変える可能性を持っている。30日かかっていたジミヘンのソロを2〜3日で記憶できるようになったのは、暗記力が上がったんじゃない。「音楽を感知する能力」が瞑想によって研ぎ澄まされた結果だ。

瞑想といっても、難しく考える必要はない。

  • 練習前に5分間、目を閉じて呼吸に意識を向ける
  • 練習中は、自分の出す音に意識を集中する
  • 練習後に1分間、今日の練習を判断せずに振り返る

これだけで、ギター練習の景色が変わる。集中力が延び、音への感受性が上がり、「弾けない自分」を冷静に観察できるようになる。

速弾きの練習やエフェクターの追加よりも先に、まず自分の「聴く力」と「集中力」を鍛えてみてほしい。それがフルシアンテの瞑想法から学べる、最も実践的な教訓だと思う。

SNSでフルシアンテの演奏を観た人は、みんな同じことを言う。

「ギター練習したくなる」。この衝動こそが、フルシアンテのギターが持つ力だ。

その衝動を感じたなら、今日からギターを手に取る前に、まず5分間だけ目を閉じてみてほしい。呼吸に意識を向けて、雑念が浮かんだら静かに戻す。それだけでいい。

フルシアンテがジミヘンのソロを驚異的なスピードで記憶できるようになったのは、特別な才能じゃない。「今この瞬間に、音楽に全神経を向ける」という訓練を、彼が毎日続けた結果だ。

大丈夫。25年かけて遠回りした俺でもここまで来れたんだから。ギターは逃げない。逃げるのはいつも自分の指だ。でも今日から、その指と呼吸に意識を向けてみてほしい。きっと、今まで聴こえなかった音が聴こえてくるはずだから。

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