【聴き順ガイド】レッドツェッペリンのアコースティック名曲を段階別に聴く

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レッド・ツェッペリンと聞いて、最初に頭に浮かぶのは何だろう。

「Whole Lotta Love」の地を揺らすようなリフ。「Black Dog」のうねるグルーヴ。「Immigrant Song」の雄叫び。――たぶん、大半の人が「ハードロック」の曲を思い出すんじゃないかな。

俺もそうだった。25年以上ギターを弾いてきて、ツェッペリンには高校時代から世話になっている。でも最初の10年くらいは、正直ハードロック側の曲しか聴いていなかった。爆音のリフを歪んだギターでかき鳴らすのが気持ちよくて、アコースティック曲なんて飛ばしていたくらいだ。

それが、いつの間にか変わっていた。30代を過ぎたあたりから、気づいたらアコースティック曲のほうばかり聴いている自分がいたんだよね。「Going to California」を流しっぱなしにして朝のコーヒーを飲んだり、「The Rain Song」の7分間に没入したり。あの頃ハードロック一辺倒だった自分に教えてやりたい。「お前が飛ばしてるその曲こそ、ツェッペリンの本質だぞ」って。

ところで、ギタリストなら一度は聞いたことがあるんじゃないかな。「ギターショップで弾いちゃいけない曲リスト」の話。

Smoke on the Water、Room 335……そしてStairway to Heaven。つまり「天国への階段」のアコギイントロを楽器店で弾く人が世界中で後を絶たないほど、あのフレーズには人を引きつける魔力がある。でもな、ツェッペリンのアコースティック曲は「天国への階段」だけじゃない。むしろ、あの曲はアコースティック世界の「入口の一つ」に過ぎないんだよね。

この記事では、ツェッペリンのアコースティック曲を「聴く順番」で紹介していく。入門→中級→深淵の3段階で、ペイジのアコギの世界観に少しずつ入り込めるようなロードマップだ。さらに「なぜツェッペリンはアコースティックに向かったのか」という背景ストーリーと、ギタリスト向けに曲別の変則チューニング+難易度一覧表もまとめた。

「ハードロックのイメージしかない」という人こそ、読んでみてほしい。きっとツェッペリンの見え方が変わるはずだから。

目次

レッド・ツェッペリンのアコースティック曲が”もう一つの本質”である理由

結論から言ってしまうと、レッド・ツェッペリンは「ハードロックバンド」じゃない。「ロックという音楽の全領域を体現したバンド」なんだと思う。

ハードロックバンドはいくらでもいた。ディープ・パープル、ブラック・サバス、AC/DC。でもツェッペリンだけが、フォーク、トラッド、中近東音楽、ブルース、カントリーまでを飲み込んで、それをアコースティックギター1本で表現できた。そこが他のバンドとの決定的な違いなんだよね。

え、ツェッペリンってハードロックのバンドじゃないの? 「Whole Lotta Love」とか爆音じゃん!

そう思うよな。俺も最初はそうだった。でもな、ツェッペリンの全カタログを聴き込んでいくと、アコースティック曲の比率と質に驚くと思うよ。ハードロックだけじゃなくて、「ロックそのもの」を体現してるバンドなんだ。

音楽レビュアーの間でもこんな声がある。

「ツェッペリンが並み居るハードロック・バンドと一線を画すのは、アコースティック曲の奥行きの深さ。ペイジのアコギはブリティッシュ・トラッドフォーク、アイリッシュ、インド音楽、アラブ音楽の色合いが感じられ、幻想的かつどこか翳のある、美しくも不思議な響きを持っている」

この「幻想的かつ翳のある」という表現、すごく的を射ていると思う。ツェッペリンのアコースティック曲は「静かな曲」じゃない。静かなのに、どこか底知れない深みがある。それがペイジのアコギの唯一無二の個性なんだよね。

そして面白いのは、長年のツェッペリンファンほど、年を重ねるにつれてアコースティック側に惹かれていく傾向があるということ。Xや音楽ブログでも「最初はハードロックの曲が好きだったが、何年か聴いていくとアコースティックの曲のほうが好きになっていた」という声を何度も見かけた。俺自身がまさにその一人だから、これは実感として強くうなずけるんだよね。

ハードロックだけじゃない――ペイジのアコギに宿る多文化の響き

ジミー・ペイジのアコースティックギターが他のロックギタリストと決定的に違うのは、音楽的なルーツの幅広さにある。

ペイジは1960年代、ツェッペリン結成前にロンドンのトップ・セッションギタリストとして活動していた。ポップスからR&B、フォークまであらゆるジャンルのレコーディングに参加する中で、ブリティッシュ・トラッドフォークの旋律、ケルト音楽の哀愁、インド音楽のドローン感、中近東音楽のスケールを吸収していったんだ。

その結果生まれたのが、DADGADやオープンG、オープンCといった変則チューニングを駆使したアコギスタイル。通常のチューニングでは出せない、西洋音楽の枠を超えた響きが、ペイジのアコースティック曲には宿っている。

たとえば「Black Mountain Side」を聴いてみてほしい。あれはインド音楽の影響がモロに出ていて、タブラの伴奏と合わせたアコギのフレーズは、ロックバンドの曲とは思えない異質な美しさがある。あるいは「Friends」。オープンCチューニングで弾かれるこの曲は、中近東的な旋律とドローン感が融合していて、アコースティックなのに「重い」。不思議な圧力がある曲なんだよね。

2025年映画「ビカミング」が証明した”ツェッペリンは過去のバンドじゃない”

「ツェッペリンなんて昔のバンドでしょ?」と思っている人がいたら、ちょっとこの事実を見てほしい。

2025年に公開されたドキュメンタリー映画「レッド・ツェッペリン:ビカミング」が、渋谷シネクイントで洋画興行収入1位を記録した。パンフレットは即日完売して増刷が決定し、公式グッズストアでは100種以上のグッズが販売されたという。

解散から40年以上経っても洋画1位を取れるバンドが、世界にどれだけいるだろう。ツェッペリンは「過去のバンド」じゃない。今もなおリスナーを引きつけ続ける現在進行形の存在なんだよね。

そしてこの映画をきっかけにツェッペリンを初めて聴く人も増えている。そういう新しいリスナーにこそ、アコースティック面の魅力を知ってほしい。ハードロック曲だけ聴いて「かっこいいバンドだな」で終わるのは、あまりにもったいないから。

なぜツェッペリンはアコースティックに向かったのか――ブロン・イ・アーの物語

ツェッペリンのアコースティック曲を語るうえで、絶対に外せないアルバムがある。1970年発売の3枚目「Led Zeppelin III」だ。

IIIが生まれた背景には、ひとつの場所の名前がある。ブロン・イ・アー(Bron-Yr-Aur)。ウェールズの山間にある、電気も電話もない小さなコテージだ。

1970年、ツェッペリンはI(ファースト)とII(セカンド)の連続リリースと過密なツアースケジュールで消耗しきっていた。商業的な成功は手に入れたものの、「次も同じようなハードロックを」という外からの期待に、特にジミー・ペイジとロバート・プラントは息苦しさを感じていたんだよね。

そこで二人が向かったのが、プラントの幼少期の思い出の地であるブロン・イ・アーだった。電気がないから、エレキギターは鳴らせない。あるのはアコースティックギターだけ。二人は暖炉の火とランプの灯りの中で、ひたすらアコギを弾き、曲を書いた。

この体験が、IIIのアコースティック色を決定づけた。自然の中で、電子機器から切り離された状態で生まれた音楽。それがツェッペリンのアコースティック曲の「原点」なんだ。

当時の批判と「不評だった」という事実

ただし、IIIのリリース当時の反応は、決して好意的なものばかりじゃなかった。正直に書いておくべきだと思う。

I・IIでハードロックバンドとしてのイメージが定着していたツェッペリンが、突然アコースティック色の強いアルバムを出した。ファンの一部は「軟弱になった」と批判し、前作IIより売り上げは落ちた。

当時を知る人の声にこんなものがある。

「”ビートルズは終わった。これからはツェッペリンだ”と意気込んでIIIを発売初日に買った友人に感想を聞くと”あまり良くない”とのこと。2ndのようなハードさを期待したのにアコースティックが多く拍子抜けしたらしい」(個人ブログより)

また音楽レビューサイトでは「アコースティック・ナンバーは少し退屈だが、ハードロック・ナンバーは素晴らしい出来」「アコースティック曲が多いため、レッド・ツェッペリンのアルバムの中でも賛否両論の作品」という評価もある。

当時のファンがガッカリした気持ち、わからなくはない。「Whole Lotta Love」の続きを期待して買ったら、アコースティック曲が並んでいた。そりゃ面食らうよな。

それでもIIIがなければ「天国への階段」は生まれなかった

でもな、ここが大事なんだ。IIIでの「アコースティック実験」がなければ、次のIVに収録された「天国への階段」は絶対に生まれなかった。

IIIでアコースティックの可能性を探り、フォークとトラッドの要素をバンドサウンドに融合させる技術を磨いたからこそ、IVで「静と動の完璧な融合」を実現できた。天国への階段のあの構成美――アコースティックの前半からエレクトリックの後半へと昇りつめるドラマ――は、IIIでの試行錯誤なしには到達できなかったはずだ。

つまり、IIIがあったから天国への階段が生まれたってことですね?

そういうこと。IIIは「時代を先取りしすぎた」アルバムだったんだと思う。当時は受け入れられなかったけど、今聴くと駄曲がほとんどないし、初心者にもわかりやすい曲が多い。実はアコースティック入門盤として最適なんだよね。

実際、現在のIIIの評価は当時とはまるで違う。「初期4作の中では影が薄いが、初心者でも分かりやすい曲が多く、個人的にはよく聴いた」「今では名盤として語られる」という声がレビューサイトやnoteで数多く見られる。あのアルバムは、50年かけてようやく正当な評価を受けたと言っていい。

【聴き順ロードマップ】レッド・ツェッペリンのアコースティック名曲を段階別に聴く

ここからが本題だ。ツェッペリンのアコースティック曲を、入門→中級→深淵の3段階に分けて紹介していく。

上位サイトでは「名曲10選」「名曲15選」と曲を並べているものが多いけれど、正直あれだとどこから聴けばいいかわからないんだよね。特にアコースティック曲は、ツェッペリンの中でも「聴く人を選ぶ」側面がある。いきなりマニアックなインスト曲から入ったら、「何これ? 退屈じゃん」で終わってしまう。

だからこそ、「この順番で聴けば、自然とペイジのアコギの世界に入り込める」というロードマップを提案したい。サブスクを開いて、今すぐ聴ける前提で書いていくよ。

【入門】まずはここから――癒しと美しさに触れる2曲

1曲目:Going to California(アルバム「IV」収録)

ツェッペリン随一の「癒し系」アコースティック曲。マンドリンとアコースティックギターが織りなすハーモニーは、目を閉じればカリフォルニアの乾いた風が吹いてくるような気持ちになる。

この曲は当時ペイジとプラントが敬愛していたシンガーソングライター、ジョニ・ミッチェルへのオマージュとして作られた。プラントの歌詞には「心優しい女性を探して西へ向かう」という物語があり、ツェッペリンの中では異色なほどロマンティックだ。

ハードロックのイメージしかない人が最初に聴く1曲として、これ以上の入口はないと思う。メロディがキャッチーで、ハードロック派でもすんなり受け入れられるはず。

2曲目:Tangerine(アルバム「III」収録)

甘く切ないメロディが胸に沁みる、ノスタルジックなアコースティック曲。ペイジのスチールギターが加わるサビの美しさは筆舌に尽くしがたい。

実はこの曲、ペイジがツェッペリン結成前のヤードバーズ時代から温めていたもの。つまりペイジにとって、非常に個人的な思い入れのある曲ということだ。

ギタリスト的な目線で言うと、スタンダードチューニングで弾ける数少ないツェッペリン・アコースティック曲なので、弾き語りにも向いている。入門としてもうってつけだよ。

【中級】ツェッペリンのアコースティック表現の深みへ

入門の2曲で「あれ、ツェッペリンってこんな曲もあるんだ」と感じたら、次はもう少し深い水域に踏み込んでみてほしい。

3曲目:The Rain Song(アルバム「Houses of the Holy」収録)

7分を超える大作だけれど、退屈さは一切ない。オープンチューニングのアコースティックギターが生み出す、広大で荘厳な響き。メロトロンのストリングスが重なり、やがてバンド全体が壮大なうねりを作り出す。

面白い逸話がある。ジョージ・ハリスン(ビートルズ)がジョン・ボーナムに「ツェッペリンはバラードを書かないのか?」と言ったことが、この曲が生まれるきっかけになったという。いわばビートルズへの「返答」として作られた曲なんだ。7分間の返答としては、あまりにも美しすぎる。

4曲目:The Battle of Evermore(アルバム「IV」収録)

ケルト神話とトールキンの世界が交錯する幻想的なフォークソング。ペイジのマンドリンと、ゲストヴォーカルのサンディ・デニー(フェアポート・コンヴェンション)の歌声が絡み合う。

ツェッペリンの全ディスコグラフィで唯一、女性ヴォーカルが参加した曲でもある。プラントとデニーの掛け合いは、まるで中世の吟遊詩人による物語の朗読を聴いているかのよう。ハードロックバンドがこの曲を作ったという事実が、ツェッペリンのスケールの大きさを物語っている。

5曲目:That’s the Way(アルバム「III」収録)

ブロン・イ・アーの自然の中で生まれた曲そのもの。アコースティックギターの弾き語りに近いシンプルな構成で、ペイジとプラントの「二人だけの世界」が感じられる親密な雰囲気がある。

派手さはないけれど、何度聴いても飽きない。俺はこの曲を夜遅くにヘッドフォンで聴くのが好きなんだよね。余計な音が一切入っていない分、二人の音楽的な結びつきの深さがダイレクトに伝わってくる。

【深淵】ペイジの音楽的ルーツに触れる――変則チューニングの迷宮

ここから先は、ペイジのアコースティックギターの「核心」に触れる領域だ。変則チューニングが本格的に登場し、西洋ロックの枠を完全に超えた音世界が広がる。

6曲目:Bron-Yr-Aur(アルバム「Physical Graffiti」収録)

タイトルは、あのウェールズのコテージの名前そのもの。アコースティックギターのソロ・インストゥルメンタルで、ペイジの指先だけで紡がれる約2分間の小品だ。

DADGAD系の変則チューニングで弾かれるこの曲には、ブリティッシュ・トラッドフォークの旋律が色濃く反映されている。短い曲だけれど、聴くたびに新しい発見がある。まるで古いコテージの壁に染みついた音楽が、そのまま録音されたような不思議な質感なんだよね。

7曲目:Black Mountain Side(アルバム「I」収録)

ツェッペリンのファーストアルバムに収録された、インド音楽の影響を色濃く受けたアコースティック・インスト。タブラ(インドの打楽器)の伴奏と合わせたペイジのアコギフレーズは、1969年のロックバンドの曲とは思えない異質さがある。

ルーツはバート・ヤンシュの「Black Water Side」にあり、ブリティッシュ・フォークの伝統をペイジが自分のフィルターを通して再構築した曲だ。DADGADチューニングの響きが、東洋と西洋の境界線を溶かしていく。

8曲目:Friends(アルバム「III」収録)

オープンCチューニングで弾かれるこの曲は、中近東的な旋律とドローン感が融合した独特の世界観を持っている。アコースティックなのに「重い」。普通のフォークソングとは明らかに違う、底知れない圧力がある。

この曲まで辿り着いた頃には、ペイジのアコースティック・ギターの全体像が見えてくるはずだ。フォーク、トラッド、インド、中近東――あらゆる音楽的要素が一本のアコースティックギターの中で融合している。それがジミー・ペイジというギタリストの正体なんだよね。

「天国への階段」はアコースティックギターで生まれた曲だった

「天国への階段(Stairway to Heaven)」はツェッペリンの代名詞であり、ロック史上最も有名な曲の一つだ。でも、この曲について一つ重要な事実がある。

「天国への階段」は、アコースティックギターで骨格が作られた曲なんだ。

ペイジ本人がRolling Stone Japanのインタビューで証言している。あのイントロだけでなく、曲全体の構造がアコースティックギターを起点に組み立てられた。つまり「天国への階段」は、アコースティック発想がなければ存在しなかった曲だということだ。

前半の美しいアコースティック・アルペジオからリコーダーの響きが加わり、中盤でドラムとベースが参入してリズムが生まれ、後半でエレクトリックギターのソロが天に向かって昇りつめる。この「静→動」の構造こそが、天国への階段を唯一無二にしている。

「IVの天国への階段では、フォークとハード・ロックが有史以来最高の融合を果たしている。アコギとエレキをブレンドさせたアルペジオ、リコーダーの美しい響き、ドラムが入る瞬間の興奮、そしてプラントの魂のシャウト。もう完璧」(PROGREVIEW.NETより)

音楽レビューサイトでもこうした声があるように、天国への階段の評価は「名曲」を通り越して「完璧」の領域にある。そしてその完璧さの起点にあるのが、アコースティックギターなんだよね。

ギタリストなら誰もが弾きたくなる――あのイントロの魔力

「天国への階段」のアコースティック・イントロは、ギタリストにとって一種の「通過儀礼」みたいな存在だ。弾けるようになった時の達成感は格別で、だからこそ世界中の楽器店で弾く人が後を絶たない。

実際、プロのアコースティックギタリストもこの曲の魅力に取り憑かれている。ソロ・アコースティックギタリストの南澤大介氏は、ペイジの誕生日に合わせて「天国への階段」のアコギソロ・カバーを公開した。

プロがアコギ1本でソロアレンジに挑むほど、この曲のアコースティック・パートは完成度が高いということ。これは「天国への階段はアコギでも映える」という何よりの証明だと思う。

ただし、ギター講師歴30年のプロの声も紹介しておきたい。

「天国への階段のイントロは”意外と難しい”。ギター小僧ならだれもがチャレンジしたことがあるが、闇練習して弾けてる天才を気取って人前で披露、というのがお決まりのパターン」(ギター講師ブログより)

天国への階段のイントロだけ弾ければモテるっしょ! 練習するわ!

気持ちはわかるけどな(笑)。確かにイントロだけなら頑張れば弾ける。でも「弾ける」と「ちゃんと弾ける」は別物なんだよね。変則チューニングの曲から先にペイジのアコギの世界観を理解して、それから天国への階段に挑戦した方が、結果的に早いと思うよ。

「天国への階段」はアコギの曲だと勘違いされがちだが…

一つ、よくある誤解を解いておきたい。

「天国への階段」はアコースティックギターから始まるけれど、「アコギの曲」ではない。あくまで「アコースティック→エレクトリック」という壮大な展開を持つ、一つの物語のような曲だ。

「自称レッドツェッペリン好きを豪語しながら一曲も弾けないではお話にならない。天国への階段のアコギパートは、アコギから始まるのでアコギ系の曲だと勘違いしている人も多い」(個人ブログより)

こういう指摘は的を射ていると思う。アコギのイントロだけを練習して「弾けた」と満足するのではなく、曲全体の構成――前半の静謐なアコースティック、中盤でリズム隊が加わる高揚感、後半のエレクトリックによる爆発――を理解してこそ、この曲の真価がわかる。

noteで全アルバムマラソンを実施したレビュアーの言葉が、この曲の本質をよく言い表している。

「IVの”天国への階段”ではバンドの磨いてきた”静と動”の最高到達点がある。前半・静のアコギの旋律にリズム隊が参入して動を蓄えながら天に上っていく濃密でドラマチックな世界観。圧倒的だと思う」(noteより)

「静と動の最高到達点」。これ以上ないまとめだと思う。そしてその「静」の部分を担っているのが、アコースティックギターなんだ。

【実用ガイド】ツェッペリンのアコースティック曲 変則チューニング+難易度一覧表

ここからはギタリスト向けの実用情報だ。ツェッペリンのアコースティック曲は変則チューニングの宝庫で、曲ごとにチューニングが違うことも珍しくない。

「弾いてみたいけど、チューニングも難易度もわからない」という人のために、主要なアコースティック曲を一覧にまとめた。こういう表、意外とどのサイトにも載っていないんだよね。

曲別チューニング&難易度テーブル

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曲名アルバムチューニング難易度弾きどころ・注意点
TangerineIIIスタンダード★★☆☆☆入門に最適。ストロークとアルペジオの基礎があればOK
Going to CaliforniaIVDADGBD(6弦=D、3弦=D)★★☆☆☆フィンガーピッキングの練習に。テンポがゆったりで焦らず弾ける
That’s the WayIIIスタンダード★★☆☆☆シンプルなコード進行。弾き語り向き
Over the Hills and Far AwayHouses of the Holyスタンダード★★★☆☆イントロのアコギリフが印象的。エレキとの切り替えあり
The Battle of EvermoreIVスタンダード(マンドリン)★★★☆☆マンドリンのパート。ギターで代用する場合はオクターブ上で
Stairway to HeavenIVスタンダード★★★★☆イントロは有名だが正確に弾くのは難しい。アルペジオの正確性が鍵
Babe I’m Gonna Leave YouIスタンダード★★★★☆アルペジオ→ストロークの激しい切り替え。ダイナミクスが命
The Rain SongHouses of the HolyDGCGCD★★★★☆独特のオープンチューニング。コードフォームが通常と全く異なる
Bron-Yr-AurPhysical GraffitiCACGCE★★★★★ソロインスト。指の独立性が必要。ペイジのタッチを再現するのが至難
Black Mountain SideIDADGAD★★★★★インド音楽的フレーズ。DADGAD特有の運指に慣れる必要あり
FriendsIIIオープンC(CGCGCE)★★★★★中近東的旋律。独特のリズムパターンとドローン感の再現が難関

※チューニングは代表的なものを記載。ライブバージョンではさらに異なるチューニングが使われている場合もある。

初心者はどこから弾き始めるべきか

「ツェッペリンのアコースティック曲を弾いてみたい。でもどこから始めればいいかわからない」――そんな人に、俺なりのおすすめ順を提案したい。

STEP
Tangerine(スタンダードチューニング・★★)

まずはスタンダードチューニングで弾ける曲から。コード進行がシンプルで、ストロークとアルペジオの基礎があれば十分挑戦できる。「ツェッペリンの曲が弾けた」という成功体験を最初に味わってほしい。

STEP
Going to California(変則チューニング入門・★★)

変則チューニングの世界への第一歩。6弦をDに下げ、3弦もDに。チューニングを変えるだけで、いつものギターが別の楽器のように鳴り始める体験は感動的だと思う。テンポがゆったりなので、焦らずフィンガーピッキングの練習ができる。

STEP
That’s the Way(弾き語り入門・★★)

スタンダードチューニングでシンプルに弾ける。弾き語りの練習にも最適。ここまで3曲弾けたら、ペイジのアコースティック・スタイルの基礎は掴めたはず。

STEP
Over the Hills and Far Away(中級への橋渡し・★★★)

アコースティックのイントロからエレクトリックに移行する構成を持つ曲。アコギパートだけを練習するのもアリ。リフの正確さとリズムのタイト感が求められる。

STEP
Stairway to Heaven(挑戦の頂・★★★★)

ここまで来たら、いよいよ「天国への階段」に挑戦してみてほしい。ペイジのアコースティック世界を4曲で体感してきた耳と指なら、あのイントロの一音一音の意味がわかるはず。焦らず、ゆっくり、一音ずつ。それが一番の近道だよ。

変則チューニングってちょっと怖いんですが、ギターの弦が切れたりしませんか?

基本的にチューニングを「下げる」方向だから、弦が切れる心配はまずないよ。むしろ弦の張力が下がるから、指に優しかったりするんだよね。最初は「え、こんな音出るの?」って驚くと思う。それが変則チューニングの楽しさなんだ。

ジミー・ペイジのアコースティックギター機材ミニガイド

ツェッペリンのアコースティック・サウンドを語るなら、ペイジが使った機材にも触れておきたい。ペイジといえばレスポールのイメージが強いけれど、アコースティックギターにも強いこだわりを持っていた。

ここではレコーディングの核となった2本を紹介する。エレキギター機材の詳細は別の記事に譲るとして、アコギに絞った「ミニガイド」として読んでほしい。

マーティン D-28――ペイジのアコースティック・サウンドの核

マーティン D-28は、ペイジのアコースティック・サウンドを語るうえで絶対に外せない1本だ。

1970年に入手し、3枚目(III)から4枚目(IV)のレコーディングで使用した。あの「Bron-Yr-Aur」のインストも、D-28をオープンチューニングにして弾いている。

D-28はマーティンの中でも定番中の定番。ドレッドノートサイズの深い低音と、クリアな高音のバランスが特徴で、フォークからブルーグラスまで幅広く使われてきた名器だ。ペイジはこのギターの「素直で太い音」を活かして、変則チューニングでも音がぼやけない力強いアコースティック・サウンドを作り上げた。

ギター機材のレビューサイトでも「ペイジのアコースティック・サウンドを再現したいならD-28は外せない」と評されている。もちろん新品は高価だけれど、この音を知ってしまうとその理由がわかる。

ギブソン J-200――エレキ弦をアコギに張った逸話

もう1本、面白い逸話のあるギターがある。ギブソン J-200だ。

ペイジはセッション仲間のビッグ・ジム・サリヴァンから1963年製のJ-200を借りて、ファーストアルバムのレコーディングに使用した。そして驚くべきことに、あの名曲「Babe I’m Gonna Leave You」ではエレキギター用の弦を張って弾いたという。

エレキ弦はアコギ弦より細くて張力が低い。だからアコギに張ると、通常のアコギサウンドとは違う「緩んだような、少しヨレた独特の音」が出る。あの曲のアルペジオが持つ不安定で揺らぎのある響き――その正体は、エレキ弦をアコギに張るという型破りな発想にあったんだ。

普通はやらない。でもペイジはやった。そしてそれが、他のギタリストには出せない「ペイジだけの音」を生み出した。こういうエピソードを知ると、ツェッペリンのアコースティック・サウンドが単なる「アコギの音」ではないことがよくわかると思う。

ライブのアコースティック・セット――スタジオ版だけじゃない魅力

ツェッペリンのアコースティック曲の魅力は、スタジオ・アルバムだけにとどまらない。実は、ライブでのアコースティック・セットこそがツェッペリンの真骨頂だったという声は根強い。

特に有名なのは、1975年のアールズ・コート公演だ。4時間半にも及ぶ伝説的なライブの中に、アコースティック・セットが設けられた。セットリストには「Going to California」「That’s the Way」「Bron-Y-Aur Stomp」が含まれ、巨大なアリーナが一瞬にして親密な空間に変わった。

ここで面白いのは、アコースティック・セットが「クールダウン」や「休憩」の位置づけではなかったということ。むしろハードロック・パートと同等以上の重みを持つ、ライブの「ハイライト」として機能していた。爆音でも静寂でも客を圧倒できるバンドだったからこそ、可能だった演出なんだよね。

トリビュートバンドが再現するほどの重要性

このアコースティック・セットの重要性は、現代のトリビュートバンドの活動からも見えてくる。

LED ZEPAGAINの来日公演では、1975年アールズ・コートのセットリストが忠実に再現された。4時間半のライブの中にアコースティック・セットが設けられ、「Going to California」「That’s the Way」「Bron-Y-Aur Stomp」の3曲が演奏されたという。

「ZEPAGAINの来日公演で、1975年アールズ・コートのセットリストを忠実に再現。ライブのアコースティック・セットこそツェッペリンの真骨頂」(LED ZEPAGAINライブレポートより)

トリビュートバンドが半世紀前のセットリストを忠実に再現し、観客がそれに熱狂する。この事実が、ツェッペリンのライブにおけるアコースティック・セットがどれほどファンにとって重要だったかを物語っている。

もしサブスクでツェッペリンのライブ音源が見つかったら、ぜひアコースティック・セットの部分を聴いてみてほしい。スタジオ版とはまた違う、生々しい空気感がそこにあるはずだ。

ツェッペリンの繊細さを物語るエピソード――広島原爆ドームでの涙

最後に、一つだけエピソードを紹介させてほしい。ツェッペリンの「人間性」が垣間見える話だ。

音楽評論家の湯川れい子氏が、自身のXアカウントでこんなエピソードを明かしている。

ツェッペリンが来日した際、湯川氏が広島の原爆ドームに案内したところ、ロバート・プラントもジミー・ペイジも目を真っ赤に泣き腫らした。そしてその日の広島公演の売り上げから自分たちの取り分を全額、原爆被害者に寄付して帰ったという。

ハードロックの暴れん坊、ツアー先で伝説的な破壊行為をするバンド――そういうイメージとのギャップが、このエピソードにはある。でも、この繊細さや人間味を知ると、アコースティック曲の美しさがまた違って聴こえてくるんだよね。

ツェッペリンって、こういう一面もあるんですね…。イメージが変わりました。

そうなんだよ。アコースティック曲の繊細さって、こういう人間性の表れでもあるんじゃないかなと思うんだよね。爆音だけがツェッペリンじゃない。静かな曲に込められた感情の深さを感じ取ってもらえたら、嬉しいな。

まとめ――レッド・ツェッペリンのアコースティック曲は”もう一つの本質”だ

ここまで読んでくれて、ありがとう。

レッド・ツェッペリンのアコースティック曲は、ハードロックの「裏面」でも「息抜き」でもない。ペイジのフォーク、トラッド、中近東音楽への深い造詣が生んだ、幻想的で唯一無二のサウンド。それはツェッペリンの”もう一つの本質”だ。

50年経った今でも、この音楽は色褪せていない。映画「ビカミング」が洋画興行収入1位を取ったことが、その証拠だと思う。

もし「ハードロックのイメージしかない」という人がいたら、まずはこの聴き順で体験してみてほしい。

  • 【入門】Going to California → Tangerine
  • 【中級】The Rain Song → The Battle of Evermore → That’s the Way
  • 【深淵】Bron-Yr-Aur → Black Mountain Side → Friends

そしてその途中で「天国への階段」を聴き直してみてほしい。きっと、以前とは違う聴こえ方をするはずだから。

ギターを弾く人なら、Tangerineあたりから挑戦してみるのもいい。変則チューニングの世界は最初こそ戸惑うかもしれないけれど、一度足を踏み入れたら抜け出せなくなる。ペイジのアコギの迷宮は、それだけの深さと面白さがある。

俺自身、ハードロック一辺倒だった高校時代から25年以上が経って、今はアコースティック曲のほうばかり聴いている。あの頃の自分に教えてやりたいよ。「お前が飛ばしてるその曲に、ツェッペリンの本質があるんだぞ」って。

きっと、同じ体験をする人がいると思う。この記事がその入口になれたなら、嬉しいな。

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